| 和紙原料と製紙工程 |
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| 1. 紙の発明 |
製紙法の発明は、羅針盤、火薬、活版印刷術と並んで古代中国の四大発明の一つに数えられる。かつては後漢中期の宦官、蔡倫(?〜121)が紙の発明者とされたが、20世紀終わりには中国国内で蔡倫以前の前漢時代(紀元前206年〜8年)の遺跡から、紙状のものが順次発見されている。蔡倫が製紙法の発明者とされるのは、和帝(79〜105年、在位88〜105年)に製紙法を報告したことによる。
蔡倫以前に編纂された中国最古の辞書『説文解字』(紀元100年)には、「紙は古綿を水中で叩き、簀の子で汲み上げたもの」を意味する表記が見られる。従って、蔡倫はこれを改良して、製紙する方法を考え出したものとされており、今日では、蔡倫が和帝に献上した年よりも240〜280年前に紙が作られ、使われていたことが証明されている。 |
| 2. わが国における紙づくり |
日本で紙づくりが始った時期や場所については明らかになっていないが、わが国における紙に関する最初の記録は『日本書紀』で、巻22・推古天皇の条に、推古天皇18年(610年)に、高句麗から僧・曇徴(どんちょう)が来朝し、製紙技術を伝えたとする記述がある。
「十八年春三月 高麗王貢上 僧曇徴法定。曇徴 知五経 且能作彩色紙墨 并造碾磑。蓋造碾磑始于是時歟」(18年の春3月、高麗王、僧曇徴、法定を貢上す。曇徴は五経を知り、且た能く彩色及び紙・墨を作り、并せて(=水車を利用した石臼)を造る。蓋し碾磑を造るは是の時に始まるか)。
これをもって曇徴をわが国の紙の祖とするのが一般的な定説である。一方、紙や製紙方法は、曇徴以前にわが国に伝っていたとする説も多く、今後の研究が待たれるところである。
現存する日本最古の書物と見られるのは、615年に作られたと伝承される『法華義蔬』(ほっけぎしょ)である。皇室の私物である御物(ぎょぶつ)であり、聖徳太子自筆の草稿本と考えられているが、異説もある。本文は中国製の紙を使用し、貼紙は日本製の紙であるとの見方があるが、詳細は明らかになっていない。
日本製の最古の紙は、正倉院にある大宝2年(702)の美濃・筑前・豊前の3点の戸籍断簡(断簡=書物の一部が切られ残ったもの)で、コウゾを原料としてつくられた紙であることが明らかになっている。
朝鮮半島を経由して中国から伝わった紙及びその製法は、さらにわが国の中で改良が加えられ、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの靭皮繊維を原料に、トロロアオイなどから得られる粘液を添加し、「流し漉き」と呼ばれる独特の製紙方法が生み出され、日本独自の紙、「和紙」へと進化していったのである。 |
| 3. 和紙の定義 |
日本工業規格の「紙・板紙及びパルプ用語」(規格番号JISP0001)では、和紙を「我が国で発展してきた特有の紙の総称」とし、また、「参考」として「手すき和紙と機械すき和紙とに分類される。本来は、じん皮繊維にねりを用い、手すき法によって製造された紙。現在では化学パルプを用い、機械すき法によるものが多い。」としている。
和紙の対義語となる「西洋紙」あるいは「洋紙」の名称は、明治維新を契機として、政府が発行する紙幣・証券類や西欧文明を吸収・普及するための印刷物類などの作成のため紙の需要が増大したことから、イギリス等から輸入が行われたことから呼ばれるようになったとされる。それらと区別するために「和紙」と呼ぶようになったようである。当時の和紙は、コウゾ、ミツマタなどを原料とする手漉きによる紙、西洋紙はパルプを材料とする機械漉きの紙を指すものであった。しかし、機械化の進展や、一部パルプ等を使用するなど素材の多様化が進み、現在では材料と手法による区分が困難な状況となっている。
紙の構造から見た場合、一般に、和紙は繊維が複雑に絡み合っているため、丈夫であるとともに独特の風合いを持ち、洋紙は繊維の方向が一定で、和紙のような柔軟性はない。
以上のことから、和紙の明確な定義は明らかになってはおらず、日本独自の風合いを持つ紙を広く「和紙」と称しているのが現状である。
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| 4. 和紙の主な原料 |
| 和紙の原料には、コウゾ、ミツマタ、ガンピ、麻、藁、竹などが用いられる。これらの中で一般に用いられるのは、コウゾ、ミツマタ、ガンピである。これらの他、流し漉き法で紙を漉く際に、水の中で繊維を均一に分散させるために、トロロアオイの根から抽出した粘液が使われる。 |
1)コウゾ
クワ科の植物で、以下に示す4種がある。ヒメコウゾ、ツルコウゾは製紙用としてはあまり重要とされていない。コウゾとカジノキは、地域による個体差や呼称の混乱が見られ、一般には栽培されているものが「こうぞ」と呼ばれているが、この中にはコウゾとカジノキの両種が含まれており、和紙原料としては厳密な区別は行われていない。以下に一般的な特性を示す。 |
(1)コウゾ
学名:Broussonetia kazinoki × B. papyrifera
カジノキとヒメコウゾの雑種のため、固有の学名はない。カジノキに近いものとヒメコウゾに近いものがあり、栽培して和紙原料とされるのはカジノキに近いものが多い。雌雄異株。カジノキの若枝にある毛は少ない。葉の表面に点状毛があってざらつきがあるが、カジノキほどではない。果実はほとんどつけない。ヒメコウゾに近いものは雌雄異株でヒメコウゾによく似るが、葉が大きく裏面の毛が多い。 |
(2)ヒメコウゾ
学名:Broussonetia kazinoki Siebold
岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島(奄美大島)、朝鮮半島から中国中南部の林縁や二次林に生育する落葉低木。和紙原料となるコウゾは、本種とカジノキの雑種を差す。
樹高は3〜5mになる。葉は左右不相称の卵形(枝の下の方が広い)、先が尾状にとがる。しばしば大きく切れ込んで3〜5裂する。葉身の長さは7〜13cm、葉柄は1cm以下。雌雄異株であるが、当年枝の上部の葉腋に約5mmの柄を持った雄花序が着く。果実は球形の集合果で、直径約15mm。梅雨の頃に赤く熟して食べられる。 |
(3)カジノキ
学名:Broussonetia papyrifera (L.) L’Har. ex Vent.
東南アジア原産の落葉高木、樹高は10数mに達し、直径50cmを超えることもある。繊維を得る為に古代から栽培された。北海道から九州、南西諸島まで植栽され、野生状態にもなっている。
葉は広卵形、しばしば大きく3裂し、長さ10〜20cm、葉縁の鋸歯は浅い。葉は厚く、上面は緑色で短毛が散生してざらつき、下面は緑が淡く、軟毛が密生してビロード状になる。葉柄が長く2〜10cmになること、当年枝に毛があってざらつく。葉に毛が多いことでコウゾとの区別は容易である。雌雄異株、集合果は球形、直径約3cmで赤く熟する。 |
(4)ツルコウゾ
学名:Broussonetia kaempferi Siebold
本州の一部と四国、九州の林縁などに生育する落葉のつる性木本植物。樹高は2〜3mにとどまる。葉は薄く、長楕円状卵形で先が長く伸び、基部は左右不相称、長さ5〜17cm、表面は緑色で短毛があってざらつく、裏面は淡い緑色で葉脈に沿って毛がある。葉柄は長さ6〜20mm。雌雄異株、花序は当年枝の葉腋に着く。雌花序は球形、紅紫色で糸状の雌しべが目立つ。雄花序は楕円体、雌しべが退化している。
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コウゾ、カジノキの種類
コウゾ、カジノキには、いくつかの異なる品種が存在する。以下に主なものを示す。種類名は地方によって名称が異なるが、以下の6種は、高知県で呼ばれているものである。 |
| (1)アカソ
枝条色は赤みを帯び分枝は少ない。葉の切れ込みは深く麻葉形となる。収量は多く歩留まりもよい。暖地の日当りによく生育し、繊維品質は優良である。
(2)アオソ
枝状色は緑色で分枝は多い。葉はアカソより切れ込みはやや少なくて小さい。いずれの土地にも適し強健である。収量も歩留まりも少ないが繊維はアカソよりも優秀である。
(3)タオリ
枝条色は橙褐色で湾曲横臥し受精は強く枝条は長く太い。分枝はやや多い。葉は中くらいの大きさでなまず葉形。収量は多いが歩留まりは中程度。栽培が容易で土地を選ばない。障子紙原料として最も優れる。
(4)クロカジ
枝条色は暗褐色で斑紋があり、枝条は太く分子は多い。葉は大きく濃緑色で葉柄は長い。収量は多く歩留まりはやや少ない。栽培は容易であるが一次繊維が長過ぎるので品質は劣る。
(5)タカカジ
枝条色は黄白色。枝条は太く剛毛が密生している。葉は中くらいの大きさで葉柄は特に長い。収量は少ないが歩留まりは高い。生育が劣り品質も悪い。
(6)マカジ
枝条色は灰褐色で斑紋があり、枝条は中くらいの太さで分枝が多く、小型の葉は密生して着く。収量・歩留まり共に少ないが、繊維品質はタオリに次いでよい。変異品種が多い。 |
| 2)クワ |
(1)マグワ
学名:Morus alba L.
中国原産の落葉高木で、樹高は10〜15mとなり、主に養蚕のため栽培されてきた。葉身は卵形または広卵形、しばしば2〜3裂、長さ8〜15mm。葉縁の鋸葉は三角形状、葉先は尾状にならない。基部は浅い心形か切形。表面はほとんど無毛。裏面は脈上に毛が散生、脈腋には密生する。雌雄異株、花は5月頃新葉の展開とともに、当年枝の下部に咲く。雌花序は長さ5〜10mm、柄もほぼ同長で軟毛が密生する。雌しべの先は細く2裂するが、子房との間(花柱)はごく短いため、果実が熟した時に雌しべの跡は目立たない。集合果は楕円形で紫黒色に熟し、食べられる。古代から各地で栽培され、野生化したものにはヤマグワ等との雑種が多い。 |
(2)ヤマグワ
学名:Morus australis Poir.
サハリン、北海道、本州、四国、九州、南西諸島、中国、インドシナ半島、インド、ヒマラヤの低地に生育する落葉低木〜高木で、高さは10mに達する。かつては南方系のシマグワと区別されていたが、今日では同種と見なされている。
葉身は卵状広楕円形で、深く切れ込みが入り、3〜5裂する。葉先は短い尾状、基部は切形または浅い心形、長さ6〜14cm。表面は脈上に短毛が散生するほか、先が突出した異形細胞のためにややざらつく。裏面は脈上と側脈の基部に軟毛がある。雌雄異株、花は4・5月頃新葉の展開とともに咲く。花序は尾状で当年枝の下部に着く。雌花序は長さ5〜12mm、長さ7〜15mmの柄に着く。集合果は初め赤色、熟して紫黒色になる。雌しべの花柱部分が長く、果実が熟しても毛のように残る。 |
3)ミツマタ
学名:Edgeworthia chrysantha
ジンチョウゲ科ミツマタ属の多年生落葉低木で、中国中南部、ヒマラヤ地方原産とされる。その靭皮は紙幣用紙、局紙、証券洋紙、絶縁紙、金箔原紙などに利用される。
ミツマタの幹は45〜90cmまでに達するとその頂芽は止まり、そのすぐ下の傍芽3つが3方向に伸長し始める。さらに20〜40cm伸長するとまた3枝条に分岐し、これを繰り返す。分岐は稀に2または4〜5に増減することがあり、分岐せずに真っすぐに伸びる個体や帚状に多分岐する個体もある。
葉は無縁披針形で互生し、葉裏には絹状光沢の毛茸が密生し、その突起数は品種分布の重要な標徴である。
9月に枝条先端に30〜50個の蕾からなる花序を生じ、2月に外側から黄色の芳香の高い花を開く。花は4枚合弁の筒花状で外は白色、内は黄色で、長短4本ずつのオシベと中央に1本のメシベがある。果実は6月に黄熟し、中央に黒色の種子1つが果肉に包まれている。
ミツマタの繊維はコウゾより繊細で短い。主な品種に高知種、静岡種の2種がある。両種の違いは表2の通りである。 |
4)ガンピ
ガンピは、ジンチョウゲ科の落葉低木で、アオガンピ属1種と、ガンピ属6種がある。生育が遅く、多くは野生のものが採取・利用されている。しかし、その多くは地域によってはは絶滅危惧種の指定を受けており、長期的視野に立った栽培システムの検討など、将来に向けての供給体制の整備が求められる。 |
(1)アオガンピ
学名:Wikstroemia retusa A. Gray
南西諸島及び台湾の原野に生育し、和紙の生産が試みられている。 |
(2)ミヤマガンピ
学名:Diplomorpha albiflora(Yatabe) Nakai
紀伊半島、四国、九州の標高1,300mまでの山中にあり、岩石地にも生育することがある。高さ1m程度の落葉低木で、生育環境がよくないため成長が遅く採皮量が少ない。和歌山県では絶滅危惧I類、大分県で準絶滅危惧種に指定されている。 |
(3)キガンピ
学名:Diplomorpha trichotoma(Thunb.) Nakai
近畿地方以西の低山地に生える。高さ1〜2mの分枝の多い落葉低木。種子がよく発芽し、その年に花をつけるので比較的採皮量は多いが、分枝が多く繊維処理に手間がかかる欠点がある。愛知県、大分県で絶滅危惧I類、島根県、愛媛県で絶滅危惧II類、京都府で準絶滅危惧種に指定されている。 |
(4)ガンピ
学名:Diplomorpha sikokiana(Franch. et Savat.)Honda
日当りのよい低い山に生える高さ2m前後の落葉低木。静岡・石川県以西に分布する。樹皮はサクラの肌に似ている。5〜6月頃に枝先に10個ほどの花をつける。高級和紙の原料とされ、栽培された記録もある。石川県と佐賀県で、準絶滅危惧種に指定されている。 |
(5)コガンピ
学名:Diplomorpha ganpi (Siebold et Zucc.) Nakai
関東から奄美大島までの日本各地と、台湾の日当りのよい山地に見られる。高さ1m足らずで、根元から多数叢生する落葉低木である。幹は毎年20cm程度で枯れてしまい、長い糸になりにくく、太く長い白皮が採れにくいので、除塵などの作業効率が悪くなり、良質な紙を作りにくい。千葉県、東京都で絶滅危惧I類、茨城県、島根県で絶滅危惧II類、栃木県、佐賀県で準絶滅危惧種に指定されている。 |
(6)サクラガンピ
学名:Diplomorpha pauciflora (Franch. et Savat.) Nakai
伊豆半島を中心に分布する高さ2m程度の落葉低木。幹は渓側に斜めに立つのが特徴で、花は7〜8月に枝端に穂状花序が集まってまだらな円錐花序となる。明治時代までは高級和紙の原料として採皮されていたが、現在は生育地が減少して採取されていない。
環境省の絶滅危惧II類、神奈川県の絶滅危惧II類、静岡県の準絶滅危惧種に指定されている。 |
(7)シマサクラガンピ
学名:Diplomorpha yakushimensis (Makino) Masamune
九州の山地に生え、高さ2mを超す落葉低木。斜面に生えて幹は直立か、上部がやや下垂する。サクラガンピによく似ているが、花や葉が大きく、花序は密で、葉の先端が長く伸びる等の特徴によって区別される。高級和紙原料として大量に採皮されていたが、繊維が円筒形であるため緊度1)が少なく、柔らかい質感の紙ができる。
徳島県、高知県、熊本県で絶滅危惧I類、大分県、鹿児島県で準絶滅危惧種に指定されている。 |
5)ねり
「流し漉き」において美しい紙を漉くためには、原料繊維の1本1本を均一に、むらなく水中に分散させておく必要がある。植物繊維の比重は水の約1.5倍で、水の中に入れておくと沈んでしまう。そこで「ねり」と呼ばれる粘度のある液体を混入して紙を漉く。
「ねり」として一般的に使用されるのはトロロアオイ(Abelmoschus manihot)で、根を潰して水に浸けると粘度のある液が溶け出してくる。この液を布袋に入れて濾過して不純物を取り除き、漉き槽に入れてコウゾ、ミツマタなどの原料繊維と撹拌する。
トロロアオイの根には、水に溶けやすい多糖類であるガラクチュロン酸が多く含まれており、原料繊維の主成分である同じ多糖類のセルロースと親和性が高い。このため「ねり」が1本1本の繊維を包み、繊維がからまることなく水中で分散する。また、「ねり」は粘性を持つため、繊維が漉き槽内ですぐに沈殿することなく、長時間水中に浮き、均一な紙を漉くことを可能にする役割をも果たす。「ねり」の粘度は持続しないため、漉き槽に原料を加えるたびに補給する。特に温度の上昇によって粘度が低下する。
「ねり」には、トロロアオイ以外にも、アオギリ(Firmiana simplex(L.)W.F.Wight)の根、ノリウツギ(Hydrangea
paniculata)の皮、ギンバイソウ(Deinanthe bifida)が用いられる。このうちギンバイソウは、香川県、福岡県で絶滅危惧I類の指定を受けているほか、併せて11府県で指定を受けている。 |
| 5. 原料による和紙の種類 |
| 和紙の種類は、北海道から沖縄まで、350種類に及ぶとされる。これらを原料別に分類すると以下のようになる。 |
1)コウゾ紙類
繊維が太く長く(繊維幅0.014〜0.031mm、繊維長6〜21mm)強靭なため、強度を要求される和紙。近年はタイ国を中心にした外国産コウゾが多く輸入されている。
[記録用紙]西の内紙(茨城)、程村紙(栃木)、細川紙(埼玉)、小国紙(新潟)、内山台帳用紙(長野)、本美濃紙(岐阜)、黒谷和紙(京都)、杉原紙(兵庫)、石州半紙(島根)、生漉奉書紙(福井)
[障子紙]内山障子紙(長野)、美濃書院紙(岐阜)、土佐障子紙(高知)
[表具用]宇陀紙・美栖紙(奈良)、コウゾ紙(埼玉、京都、高知)薄美濃紙(岐阜)、石州コウゾ紙(島根)、大唐紙(高知)、美栖紙・肌裏紙(福岡)
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2)ミツマタ紙類
繊維が細く短く(繊維幅0.004〜0.019mm、繊維長3〜5mm)光沢があり、緻密で平滑な印刷特性に富んだ和紙ができる。代表的な紙として紙幣用紙、金糸銀糸用紙、箔合紙が挙げられる。
鳥の子紙・雲肌・局紙(福井)、三椏半紙(鳥取)、石州三椏紙(島根)、津山箔合紙(岡山)、改良半紙(愛媛)、清光箋(高知)など、書道用・絵画用紙を中心に特殊な用途に使われる。 |
3)ガンピ紙類
繊維はミツマタに似て細く短く(繊維幅0.019〜0.021mm、繊維長3.8〜4.8mm)、半透明で粘りがあり光沢のある紙ができる。代表的な和紙として箔打紙、古くは写経用紙、謄写版原紙用紙、記録用紙などが挙げられる。
鳥の子紙・斐紙(福井)、加賀雁皮紙(石川)、近江鳥の子紙(滋賀)、箔下間似合紙・金下地紙(兵庫)、出雲雁皮紙(島根)、薄様雁皮紙(高知)、雁皮紙(埼玉、島根、福岡)など、絵画、版画、高級表装用紙として使われている。
最近は民芸用として名刺、はがき、便箋、書道用紙の中にフィリピンガンピ(サラゴ=Salago)が使われることもある。 |
| 6. 主な和紙産地 |
| わが国では、北海道から沖縄県まで、多くの和紙生産地が存在する。以下に都道府県別に示す。(全国手すき和紙連合会資料をもとに作成) |
●北海道
名 称 |
和紙生産地 |
| 笹紙(ささがみ) |
北海道雨竜郡幌加内町 |
| 富貴紙(ふきがみ) |
北海道釧路市音別町 |
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●岩手県
名 称 |
和紙生産地 |
| 東山和紙(とうざんわし) |
岩手県一関市東山町 |
| 成島和紙(なるしまわし) |
岩手県花巻市東和町北成島 |
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●宮城県
名 称 |
和紙生産地 |
| 白石和紙(しろいしわし) |
宮城県白石市 |
| 柳生和紙(やなぎふわし) |
宮城県仙台市太白区 |
| 丸森和紙(まるもりわし) |
宮城県伊具郡丸森町 |
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●秋田県
名 称 |
和紙生産地 |
| 十文字和紙(じゅうもんじわし) |
秋田県平鹿郡十文字町 |
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●山形県
名 称 |
和紙生産地 |
| 高松和紙(たかまつわし) |
山形県上山市高松 |
| 長沢和紙(ながさわわし) |
山形県最上郡舟形町長沢 |
| 月山和紙(がっさんわし) |
山形県西村山郡西川町 |
| 深山和紙(みやまわし) |
山形県西置賜郡白鷹町深山 |
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●福島県
名 称 |
和紙生産地 |
| 上川崎和紙(かみかわさきわし) |
福島県安達郡上川崎 |
| 遠野和紙(とおのわし) |
福島県いわき市遠野町 |
| 山舟生和紙(やまふにゅうわし) |
福島県伊達郡梁川町 |
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●茨城県
名 称 |
和紙生産地 |
| 西ノ内紙(にしのうちし) |
茨城県那珂郡山方町 |
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●栃木県
名 称 |
和紙生産地 |
| 烏山和紙(からすやまわし) |
栃木県那須烏山市 |
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●群馬県
名 称 |
和紙生産地 |
| 桐生和紙(きりゅうわし) |
群馬県桐生市 |
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●埼玉県
名 称 |
和紙生産地 |
| 小川和紙(おがわわし) |
埼玉県比企郡小川町/秩父郡東秩父村 |
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●東京都
名 称 |
和紙生産地 |
| 軍道紙(ぐんどうし) |
東京都あきる野市 |
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●新潟県
名 称 |
和紙生産地 |
| 小出和紙(こいでわし) |
新潟県東蒲原郡阿賀町小出 |
| 小国和紙(おぐにわし) |
新潟県長岡市小国町 |
| 門出和紙(かどいでわし) |
新潟県柏崎市高柳町門出 |
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●富山県
名 称 |
和紙生産地 |
| 越中和紙(えっちゅうわし) |
富山県富山市八尾町、富山県南砺市東中江、富山県下新川郡朝日町 |
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●石川県
名 称 |
和紙生産地 |
| 加賀二俣和紙(かがふたまたわし) |
石川県金沢市二俣町 |
| 加賀雁皮紙(かががんぴし) |
石川県能美郡川北町 |
| 能登仁行和紙(のとにぎょうわし) |
石川県輪島市三井町仁行 |
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●福井県
名 称 |
和紙生産地 |
| 越前和紙(えちぜんわし) |
福井県越前市 |
| 若狭和紙(わかさわし) |
福井県小浜市和多田 |
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●山梨県
名 称 |
和紙生産地 |
| 西島和紙(にしじまわし) |
山梨県南巨摩郡身延町西嶋 |
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●長野県
名 称 |
和紙生産地 |
| 内山紙(うちやまし) |
長野県飯山市/下水内郡栄村/下高井郡野沢温泉村 |
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●岐阜県
名 称 |
和紙生産地 |
| 美濃和紙(みのわし) |
岐阜県美濃市 |
| 山中和紙(さんちゅうわし) |
岐阜県吉城郡河合村 |
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●静岡県
名 称 |
和紙生産地 |
| 駿河柚野紙(するがゆのがみ) |
静岡県富士郡芝川町上柚野 |
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●愛知県
名 称 |
和紙生産地 |
| 小原和紙(おばらわし) |
愛知県豊田市 |
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●三重県
名 称 |
和紙生産地 |
| 伊勢和紙(いせわし) |
三重県伊勢市大世古 |
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●滋賀県
名 称 |
和紙生産地 |
| 近江和紙(おうみわし) |
滋賀県大津市上田上桐生 |
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●京都府
名 称 |
和紙生産地 |
| 黒谷和紙(くろたにわし) |
京都府綾部市黒谷町 |
| 丹後和紙(たんごわし) |
京都府福知山市大江町 |
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●兵庫県
名 称 |
和紙生産地 |
| 名塩紙(なじおかみ) |
兵庫県西宮市名塩 |
| 杉原紙(すぎはらがみ) |
兵庫県多可郡加美町 |
| 淡路津名紙(あわじつながみ) |
兵庫県淡路市 |
| ちくさ雁皮紙(ちくさがんぴし) |
兵庫県宍粟市千種町 |
| 神戸和紙(こうべわし) |
兵庫県神戸市 |
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●奈良県
名 称 |
和紙生産地 |
| 吉野和紙(よしのわし) |
奈良県吉野郡吉野町 |
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●和歌山県
名 称 |
和紙生産地 |
| 保田和紙(やすだわし) |
和歌山県有田川町清水 |
| 高野紙(こうやがみ) |
和歌山県伊都郡九度山町 |
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●鳥取県
名 称 |
和紙生産地 |
| 因州和紙(いんしゅうわし) |
鳥取県鳥取市佐治町/青谷町 |
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●島根県
名 称 |
和紙生産地 |
| 出雲民芸紙(いずもみんげいし) |
島根県松江市八雲町 |
| 石州和紙(せきしゅうわし) |
島根県浜田市三隅町 |
| 広瀬和紙(ひろせわし) |
島根県安来市広瀬町 |
| 斐伊川和紙(ひいかわわし) |
島根県雲南市三刀屋町 |
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●岡山県
名 称 |
和紙生産地 |
| 横野和紙(よこのわし) |
岡山県津山市上横野 |
| 樫西和紙(かしにしわし) |
岡山県真庭市樫西 |
| 備中和紙(びっちゅうわし) |
岡山県倉敷市水江 |
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●広島県
名 称 |
和紙生産地 |
| 大竹和紙(おおたけわし) |
広島県大竹市防鹿 |
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●山口県
名 称 |
和紙生産地 |
| 徳地和紙(とくじわし) |
山口県山口市徳地町 |
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●徳島県
名 称 |
和紙生産地 |
| 阿波和紙(あわわし) |
徳島県吉野川市 |
| 拝宮和紙(はいぎゅうわし) |
徳島県那賀郡上那賀町 |
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●愛媛県
名 称 |
和紙生産地 |
| 伊予和紙(いよわし) |
愛媛県四国中央市 |
| 周桑和紙(しゅうそうわし) |
愛媛県西条市 |
| 大洲和紙(おおずわし) |
愛媛県喜多郡内子町/西予市野村町 |
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●高知県
名 称 |
和紙生産地 |
| 土佐和紙(とさわし) |
高知県土佐市/吾川郡/高岡郡/香美郡/長岡郡 |
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●福岡県
名 称 |
和紙生産地 |
| 八女和紙(やめわし) |
福岡県八女市/筑後市 |
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●佐賀県
名 称 |
和紙生産地 |
| 重橋和紙(じゅうばしわし) |
佐賀県伊万里市南波多町 |
| 名尾和紙(なおわし) |
佐賀県佐賀市大和町名尾 |
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●熊本県
名 称 |
和紙生産地 |
| 水俣和紙(みなまたわし) |
熊本県水俣市 |
| 宮地和紙(みやじわし) |
熊本県八代市宮地 |
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●大分県
名 称 |
和紙生産地 |
| 弥生和紙(やよいわし) |
大分県南海部郡弥生町 |
| 竹田和紙(たけだわし) |
大分県竹田市 |
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●宮崎県
名 称 |
和紙生産地 |
| 美々津和紙(みみつわし) |
宮崎県日向市美々津町 |
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●鹿児島県
名 称 |
和紙生産地 |
| さつま和紙(さつまわし) |
鹿児島県姶良郡姶良町 |
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●沖縄県
名 称 |
和紙生産地 |
| 琉球紙(りゅうきゅうし) |
沖縄県那覇市首里儀保町 |
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| 8. 手漉き和紙の製造工程 |
| 和紙の製造工程は、地域によってさまざまであるが、以下に一般的な工程を示す。 |
1)刈り取り
コウゾ、ミツマタなどの原料を刈り取る。刈り取る時期は秋に落葉してから翌年開葉するまで(多くは12〜1月)に行う。 |
2)蒸す
刈り取った原料は、一定の長さに切り揃え、藤蔓などで直径90cm程度に固く束ねる。蒸し釜に入れて、樹皮をむきやすくするために蒸す。 |
3)皮はぎ
蒸し上がった束を取り出し、温度が下がる前に手早く樹皮(黒皮)をはぐ。はいだ皮は適宜束ねて竿にかけて乾かす。 |
4)水に浸す
乾いた黒皮を一晩(12時間程度)水に浸ける。ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、石灰などを入れて黒皮を煮沸する場合もある。 |
5)黒皮を削る
やわらかくなった黒い表皮、あま皮や節キズなどを刃物を使って削り取り、「白皮」にする。 |
6)白皮をさらす
きれいな川の水に浸けたり、雪の上にさらしたり、天日(紫外線)に当ててより白くする。さらし粉、漂白剤を使って漂白する場合もある。「白皮」として流通しているのは、この工程を経て乾燥したものである。 |
7)煮熟(しゃじゅく)
釜で白皮を2〜3時間煮る。古くは木灰を入れたが、石灰、ソータ灰、苛性ソーダなどが使われている。煮熟後は流水にさらす。 |
8)塵取り
よく水洗いした後、きれいな水の中で、白皮についた小さな塵、黒変している部分などを丹念に取り去る。ミツマタ、ガンピでは、原料が大量の時には、フラットスクリーンという機械を利用する場合もある。 |
9)叩解(こうかい)
塵取りが終わった原料を、ひと塊ずつ出して木の棒や木槌で叩き、繊維を分散させる。これが紙の原料、「紙料」となる。現在ではホーランダービーター、薙刀ビーターなどの機器が利用されている。 |
10)紙漉き
漉き槽に水、紙料、ねりを入れ、よく撹拌してから簀桁ですくい、一枚ずつ漉く。 |
11)圧搾
積み重ねた紙を、圧搾機で強く抑えて水を絞り出す。紙層をくずさないように、徐々に重くしていく。 |
12)板はり
脱水が終わった紙を1枚ずつはがし、まだ湿っているうちに干し板に刷毛を使って貼付ける。干し板は紙がきれいに干し上がるように、つなぎ目や節目のないイチョウなどの一枚板が使われる。 |
13)乾燥
紙を貼った干し板を日光に当てて乾かす。乾燥室で熱風乾燥したり、熱くした鉄板にはって熱で乾燥させる方法もある。 |
14)選別・仕上げ
乾燥した紙を干し板からはがし、傷や塵のついた紙を取り除く。 |
15)裁断・包装
選別を終えた紙を規定の大きさに裁断し、規定の枚数を一束として包装する。
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和紙原料にはコウゾ、ミツマタ、ガンピなどがあるが、どの原料も、原木から紙になる量はほとんど変わらないとされる。コウゾの原木から障子紙を作る場合を例にすると、図1の通りである。
原木から紙になるまでには上記のように多くの工程があり、それぞれに不要な部分が取り除かれていく。障子4枚を貼るためには220gの障子紙が必要とされるが、そのためには5500gのコウゾ原木が必要になる。 |